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NO BIKE NO LIFE

おきなわ100キロ試走 & 帰路編

8月1日 113.93km 24.0km/h 1,734m
https://connect.garmin.com/activity/852330864

さて、タクシーを見送ったあと、早速便意を処理せねばと、写真の後ろに写っている、

“WCはあっち”という矢印が指す方へ行くのだが、WCが無い。探せど探せど、無い。せっかく早く着いたのに10分くらい探して、本当に無いことを悟り、仕方なく道路へ出る。と、共同店の斜め向かいに公衆トイレ的な建物を発見。うぉっしゃ!と走っていき愕然・・・、入口はシャッターに閉ざされている。信じられない。街中のトイレでもシャッターなんて閉まってるところ無いのに、一体何故?過去に何かあったのか?茫然自失。
仕方ない、用を足せる施設を発見するまで我慢して走るのみ!いざとなれば、かつてびわ湖毎日マラソンで途中大きい方の用を足しながらも優勝したフランク・ショーターのように、どこかの草むらに隠れてやればいい。でも何で拭く?びわ湖毎日マラソンの応援フラッグは無いし・・・、葉っぱ?それは痛いな、指?指なら水が流れている場所じゃないと・・・、はぁ〜。

軽量化未了のまま6時33分スタート。直ぐに登坂開始。GARMINの表示を勾配モードにしてゆっくり上る。今日は頑張って走るのが目的ではなく、勾配、距離、下りの危険度、どのくらい平坦があるか等の条件を頭に入れるのが目的。暑いし最後まで冷静に。
奥の登り、6〜9%で先ず3キロ弱か。一旦下ってまた上り、全体では約5キロで奥の登坂を終える。どうしようもなく辛い勾配ではないが、ここで先頭が遠く霞んでしまうくらい遅れたら、レースはこの5キロで終わる。どのくらいの強度で集団が登るのか、スタート直後にレース全体における自分の居るべき位置が申し渡されることになる。大きく遅れるようであれば、その後は長く苦しいサイクリング。
下って、右手に東シナ海を観ながらしばらく平坦を行く。遠くに伊平屋島が見える。
朝陽は山に遮られこちら側はまだ涼しい。路面が白い。細骨材代わりに貝殻、サンゴ礁が埋まっているというのは本当のようだ。タイヤもすぐに白くなった。トンネルの照明はサングラスを外すほどの暗さではないが、大集団だと追突の危険性は十分にあるので注意が必要。

しばし気持ちよく流して、22キロ地点で与那の登りに入る。ここは長く斜度もきつい。登坂距離7km、標高差300mへの登りは、時折10%に達する勾配が現れ、本番では他人との競争より、自分と闘うだけで精一杯なのではないかと推測される。登るにつれ、コーナーで正面から太陽を受け始め、太平洋側へ出てからの灼熱地獄を想像させる。できるだけ心拍を抑え、疲れが出ないよう大きく息を吸って登っていく。この辺りから予防的に頭、首すじに水を掛け始める。アップダウンを繰り返し、米軍の演習場を過ぎて太平洋に向かって本格的な下りに入る。怖い、下りは怖い。集団に埋没し、自分のコース取りをできない状態で、この長く急な下りをどれだけ攻められるか、気弱な自分には大きな不安要素である。万が一雨でも降ろうものなら、身の安全が第一!的なあきらめの境地に達するに違いない。
普久川ダムを過ぎR70に入ってさらに下り、安波の集落でようやく軽量化施設を発見。共同店でコーラをガブ飲み、2本のボトルにスポーツドリンクと水をそれぞれ補充して、軽量化大作戦。あぁすっきり。朝食3人分のおかげで全く空腹感は感じないが、予防が一番と練羊羹を1本食べておく。

ここからまたすぐに長い登りをこなし、その後東村へ向かう果てしないアップダウン区間に入る。満開に太陽の熱を浴び、暑さにボーッとしないよう水をかぶりながら進む。
海は遠い。地図上は海岸線を走っているようにみえて、こんなのただの耐久走だなと、もう飽き飽きするほどに上っては下りを繰り返す。

60キロを過ぎてようやく海岸線に降り、美しい海を左に見ながらしばし久々の平坦を楽しむ。
東村集落を抜け、さらに海の色が綺麗になった矢先、崖崩れで通行止め。
京都からわざわざ来たんだ、ここで引き下がってなるものかと交渉するが、自転車一台も通れないと冷たく追い返され、仕方なく後戻りして迂回路へ。これがまた酷い山道で、この日の最高勾配11%が何度も出てくる急斜面を登って降りて走行距離+7キロ、標高にして約110m余計に走ることになった。そのままR58に降りて名護に帰ろうかと思ったほどヘロヘロ。しかしここまで来たんだから絶対本コースに戻って走り切らねばと気持ちを入れ替える。やがて有銘という海岸線の集落に降り共同店で補給。ここで大変な間違い!劇坂の迂回路で相当疲れが出たとみえ、スポドリのボトルに水を入れ、水のボトルにスポドリを入れ、水のつもりで頭からかぶった瞬間に世界の終わり感満載の超絶望状態。どうすんだ、もうこの先水はかぶれないぞ。この暑さの中走り切れるのか俺は・・・。練り羊羹を1本食す。貧乏性ゆえ、ここでボトルの中身を捨て、さらに水を買って入れ直すという発想には辿り着かず、練り羊羹の甘味で少し意識を覚醒させ走り出す。

小さなアップダウンが果てしなく続く。暑い。平坦が無い。また登り、また下り、また登る・・・。大浦で最後の太平洋を撮影して、いよいよ羽地ダムへの登りを開始する。ダラダラだらだら、橋を渡りながら直線的に登っていく。レース本番では、この辺でどれだけ疲れているんだろうなと想像しながらゆっくり進む。嫌な登りだ。
番越トンネルを抜け右折してダム湖へ。まだ登る。もう辟易してくる。ようやくダムを通過し下りに入る。下って少し平坦を走るとR58だ。

大通りに出ると、前方にライダーが一人。速そうだが、信号のタイミングで少しずつ近づいていく。背が高くて細いやつだ。追い風でスピードに乗り、イオン坂(ジャスコ坂)を下った信号で追い付く。精悍な出で立ちのライダー。でかいキャノンデール。ワシントD.C.から来たというモリス君。エアフォースの訓練生だそうだ。2年住んでる割には日本語できてねぇなぁ。彼のお陰で、迂回路以後思いっ切り落ち込んでいたアヴェレイジをだいぶ持ち直し市内へ突入。海岸線の駐車場に車を停めているというモリス君と、最後の直線に出る前の信号でお別れ。お互いの走行距離を確かめ合って、バイバーイ!と手を振ってゴールへダッシュ。背後から、“初めまして〜!”と聞こえた時には、上げた腰がガクンと落ちて全身から力が抜け笑ってしまった。あいつと一緒にもっと走りたかったぜ!と心底思った。

最後の直線、意味もなくこの日最も力んで、最も心拍数を上げて下ハンでゴール。何がそうさせたか、考えてみれば人間とはそういうものだとつくづく感じ入る。土地が、距離が、暑さが、出会ったアクシデントや人がそうさせたのであろうと思う。私は弱い人間なんだと実感。

11時55分ゴール。獲得標高1,734mだが、迂回路を除く本コースはおよそ1,630mくらいとなる。かなりの数字だなぁ。迂回のために結構遅くなった。早めにゴールできれば、そのまま北部会館へ引き返し、本番の申し込みをしようと思っていたが、こんなギリギリではもう気持ちがしんどい。近くの公園の木陰にへたり込み、12時きっかりスマホで申し込み開始。疲れて指がうまく動かせず手間取るが、何とか支払い処理まで終了。コーラを飲んで、もう一度ゴール地点へ戻って証拠写真を撮影。

114Km。疲れたが、気持ちは爽快。走れてよかった。大量のサンドイッチのお陰でハンガーノックにもならずに済んだ。

さて、昼飯はどうするか、ここからホテルまでどうやって帰ろうか・・・。



帰路編
名護市〜恩納村富着 29.67km 26.3km/h
https://connect.garmin.com/activity/852330944

どうしても体が言うこと聞かなかったら迎えてに来てと言ってはあったけれども、海水浴とお昼ご飯を楽しんでいるであろう嫁さんと息子を呼び出すのもどうか。全身汗まみれで、かつ頭からスポドリ被っているのでタクシーに乗るのも気がひける。暑いし、名護から南は交通量多いし、はっきし言って走るのは危険なんだけれども・・・、走って帰ることに。
食欲もないし、どっかに入ろうという気にもならず、1個残っていた練り羊羹を食べる。これ効くなぁ。頭が冴え、体も動き出した。さぁ帰ろう。
海岸線の58号は幸いにも追い風。沖縄の道路は路肩が狭い、というか無いと言って良い。最初は怖いので歩道を走っていたが、すいすいと車道を走っていく3人のライダーを見て私も車道へ。良いスピードで走る3人はどうも家族っぽい。お父さんと2人の息子という風情。追い着いて声を掛け合流させてもらう。前に上がる際にお父さんに、”ご家族ですか?”と聞くと、”そうです”と。”いいですねぇ!”と返して先頭へ出る。しばらく引いて信号停止で後ろの息子さんから、”内地の人ですか?”と聞かれて一瞬答えを探す。内地とは沖縄本島のことを指すのか、本州のことを指すのか?一瞬で判断ができなかったため、”京都からツールドおきなわの試走に来ました!”と答えると、ちょっと嬉しそうにはにかんでいた。3人はもちろん沖縄の人で、親子で練習しているとのこと。羨ましい。
追い風とはいえいいペースで走ってきたため、さすがに空腹感を感じるようになった。コンビニで補給。親子に頑張って!と声をかけて離れる。お父さんもニコッと笑って手を振ってくれた。コーラ、おにぎりを押し込み再びホテルへ向け出発。最後の方に少し登りが繰り返し現れる。疲れてきた。
結局かなりフラフラな状態でホテルへ無事到着。ビールをプハーっと飲み干し、もう一個買っておいたおにぎりを食べ、しばし呆然。気合を入れ直してバイクをささっとパッキングしたのち、風呂。昨夜のお湯を抜かずに冷ましておいたので、全身アイシング効果ばっちり。すぐに家族も帰ってきて、めでたくまた元の観光工程に合流。
私も泳ぎたかった嫁さんと息子はビーチ一番乗りで、こんな贅沢な状態で泳げたそう。本当に綺麗。
太陽への道神々しい風景に、今日の試走の、とりわけ観光地化されていない北部の風景が重なり、非常に良い1日だったなと、感傷に浸る。
夕食はアグー豚のしゃぶしゃぶを選択。たっぷり食べて疲れを癒す。

今回幸い3泊できたのでこのような我がままを通すことができました。
理解ある嫁さんと息子に感謝しています。